
ヒトの赤ちゃんは、大きい頭を持って未熟な状態で生まれてきます。新生児のときは4頭身くらいです。
大人に比べて頭が大きい理由は、胎内にいる頃から、脳が一足早く発達するからです。ちなみに、脳の重さは新生児で300~400g位、体重の10%位です。それに対して大人は1200g~1500g。4~5歳頃には大人と同じくらいの重さになります。

脳には生後すぐから大人と同じ神経細胞が出来上がっているので、その数が増えるのではなく、神経細胞どうしがつながることで成長していきます。神経細胞どうしをつなぐシナプスはどんどん増えて脳のネットワーク化が進みますが、複雑になりすぎると正確な情報が伝わりにくくなるため、余分なシナプスを刈り込み、効率よく整理されていきます。
1歳までは特に脳の発達が目覚ましい時期で、「見える」をつかさどる第一次視覚野という部分のシナプス量を例にすると、生後2カ月くらいで一気に増え、8カ月で一生の中での最大数に達します。

赤ちゃんは頭皮が薄く、皮下脂肪や髪の毛も薄いのでひどい外傷を受けると、脳にまでダメージを与えてしまう可能性があります。大人の場合、脳は傷つかないように頭蓋骨でしっかり保護されていますが、生まれたばかりの赤ちゃんの場合、頭蓋骨を重ね合わせて産道を通るため、5つの頭蓋骨どうしの間には隙間があり、大泉門と小泉門という隙間もあります。小泉門は生後2カ月位で、大泉門は生後18~24カ月頃には閉じます。 大人のからだで、脳ほど傷つかないように保護されている器官はありません。赤ちゃんは大人に比べて脳を保護する力が極めて弱いので、十分な配慮が必要です。
1974年、「揺さぶられ症候群」という学説が報告されました。子育てに疲れてカッとなったときなどに、赤ちゃんの頭を前後に激しく揺さぶってしまうことで脳の血管が切れて、硬膜下出血やくも膜下出血を起こすことをいいます。また、目の中にある血管から出血し、網膜出血を起こしたり、視神経が傷つき、視力を失うなどの障害を残すこともあります。「高い、高い」といった普段のあやしでは脳の血管がきれるほどに揺さぶることはないので、心配はいりませんが、「高い、高い」は、赤ちゃんを落としてしまう危険性もありますので十分注意が必要です。