子育てのこと

3歳児神話

#子育てを楽しむ秘訣ココにあり

3歳児神話については2つの解釈※1があるそうです。

1つは早期教育に関わるもので、3歳までの脳に刺激を与えれば、能力が伸びるというもの。過去にかなり話題になった時期もありました。その有効性の根拠としてあげられたのが、脳の重量の発達曲線が3歳~5歳ころにほぼ成人に近い重さになるということでした。人間の能力と脳の重量の因果関係は、科学的に立証されているわけではありません。

もう1つは、「3歳までは母親が育てた方がいい」という考え方。実はこれは1960年代に欧米から日本に入ってきたものだそうです。かつて、農業が中心で大家族が当たり前だった頃の日本では、農作業などで母親が忙しいと、祖父母や兄弟、近所の人たちがみんなで赤ちゃんのお世話をしました。ところが、高度経済成長期に、父親は会社で仕事に、母親は家で育児に専念するようになり、「母親だけが子育てに専念すべき」という3歳児神話が外から入ってきたのです。

その後、母親が働いていて子どもに密接に関われない場合でも子どもの発達とは無関係であるという研究が続々と発表され、当時の厚生省(現在の厚生労働省)が1998年の厚生白書で、「三歳児神話には少なくとも合理的な根拠は認められない」という結論を出しています※2

ようやく、この3歳児神話の呪縛から開放される傾向が見えてきた最近の調査結果があります。

ベネッセ教育総合研究所が2022年3月に6カ月から6歳までの乳幼児をもつ保護者4030名に行ったアンケート結果※3です。このアンケートは2005年から6回実施されているのですが、その結果の中で子どもは「3歳くらいまでは母親がいつも一緒にいたほうがいい」と答えた人が2005年に61.7%だったのが、2022年には44.9%まで減ってきているのがわかります。

一方で、忘れてはいけないのは、“3歳までは非常に大切な時期である”ということ。子どもはこの時期に愛され、自信を持ち、人を信じる心を育みます。その一番身近な存在が母親であることも事実です。一緒にいる時間の長さではなく、その関わり方を大切にしてください。

※1 小西行郎著. 『知れば楽しい、おもしろい赤ちゃん学的保育入門』. フレーベル館. 2006. 111p
※2 厚生労働省. 『厚生白書 平成10年版』. 1998年
https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/kousei/1998/dl/04.pdf ,(参照 2023-03-10)
※3 ベネッセ教育総合研究所.「第6回 幼児の生活アンケート」. 2022年
https://berd.benesse.jp/jisedai/research/detail1.php?id=5803 ,(参照 2023-03-10)