子育てを楽しむ秘訣ココにあり/ 産後の愛情曲線を知っていますか?
子育てのこと

産後の愛情曲線を知っていますか?

#子育てを楽しむ秘訣ココにあり

産後に急速に夫婦仲がうまくいかなくなる現象、それを「産後クライシス」と呼ばれていることをご存じですか?

出産後の女性はホルモンバランスが変化するために気持ちが不安定な状況になりやすく、夫が家事や育児に協力的でない場合、夫婦の愛情度が低下することがわかっています。2012年9月にNHK総合テレビ、朝の情報番組「あさイチ」で紹介され、社会的に広がった言葉、それが「産後クライシス」です。

そのきっかけとなった調査結果があります。それは、ベネッセ次世代育成研究室が、約300組の妊娠中のカップルを4年間にわたり追跡調査し、毎年「(配偶者を)本当に愛していると実感する」かどうかを聞いています※1

これによると、「夫(妻)への愛情を実感する」と答えた人は妊娠期には夫・妻ともに74.3%なのが、2歳児期ではなんと夫51.7%、妻34.0%にまで下がりました。しかも専門家によれば産後にいったん下がってしまった愛情はその後、ほぼ回復することがないといいます。調査を行ったお茶の水女子大学の菅原ますみ先生によると、アメリカでは男女同じように下がるということで、「女性の下がり方の著しさ」は日本独特の現象とのこと。菅原先生は『日本の男性の家事育児に費やす時間が世界的にみて最低の水準にあることが関係している』と指摘されています※2

※1 ベネッセ次世代育成研究所.「第1回妊娠出産子育て基本調査・フォローアップ調査(妊娠期~2歳児期)」.2011年4月. https://berd.benesse.jp/up_images/research/research20_report1.pdf ,(参照 2023-03-10)
※2 NHK生活情報ブログ. https://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/200/130947.html ,(参照 2023-03-10)

また、菅原先生によると、赤ちゃんが生まれた後も『愛情が変わらない』と答えていた妻たちに注目してみた場合、夫が家事や子育てをねぎらっていたり、家事や育児をサポートしていると、1歳時点での夫への愛情の減少傾向は少なく、ねぎらいが少ない場合はかなり低い数値になっていたそうです。こうした現実に対して、夫はそのことにほとんど気がついていないというのが「産後クライシス」の特徴といえるかもしれません。

もうひとつ、ご紹介しておきたいデータがあります。厚生労働省が5年に1度、ひとり親世帯を対象に行う「全国ひとり親世帯等調査」の令和3年の結果です。この調査の中で「末の子どもが何歳の時に離婚したか」を聞いています。 さて、子どもがいくつのときに最も離婚していると思いますか?正解は「0~2歳」期。この頃の離婚が全体の38.1%を占めます※3

※3 厚生労働省. 「全国一人親世帯等調査」 . 令和3年.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188147_00013.html ,(参照 2023-03-10)

「産後クライシス」との因果関係はわかりませんが、0~2歳という子育て期を夫婦でどのように過ごすかによって、後に続いていく生活が変わるかもしれません。

最初に紹介したベネッセの調査から約10年。子育ては『夫と一緒にするものだ』という意識が女性の中でもますます強まり、夫婦観、家族観が変わってきています。男性は「仕事を一生懸命すること」が最大の愛情表現だと思いがちですが、多くの女性にとっては「仕事を一生懸命すること」は家庭より仕事が大事なことを意味してしまうことになる場合もあります。

赤ちゃんが生まれる前に、一度、産後の家事や子育てについて夫婦で話し合っておく機会を持っておきませんか?