赤ちゃんの発達を考える/ “うつぶせ遊び”のススメ
赤ちゃんのこと

“うつぶせ遊び”のススメ

#赤ちゃんの発達を考える

「うつぶせにすると窒息が怖い」「うつぶせを嫌がる」、だから、“うつぶせ”にはしない、そんな言葉が時々聞かれます。

“1歳未満の赤ちゃんは必ずあお向けに寝かせましょう!”という乳幼児突然死症候群(以下SIDS)の予防のためのキャンペーンが始まって30年以上が経ちます。このキャンペーンの効果で、今では日本におけるSIDSは年間100例以下に抑えられるようになりましたが、赤ちゃんに“うつぶせ”そのものをさせることを怖がるお母さんも増えました。

1歳未満の赤ちゃんは、あお向けに寝かせるのが原則です。ただ、もともと産まれて間もない赤ちゃんは、お母さんの胸の上にうつぶせにのせると、おっぱいを自分で探して吸いつき、おっぱいを飲み始める力があります。“うつぶせ”の姿勢は、あお向けからの寝返り、ハイハイ、お座りへの発達にもプラスになります。米国小児科学会は“Back to Sleep、Tummy to Play”の標語をつくり、寝かせるときはあお向けに、目覚めているときは、うつぶせにして遊ばせることの大切さを伝えています。

赤ちゃんの健やかな発育発達のために取り入れて欲しいと思う“タミータイム(うつぶせ遊び)”を安全に行っていただくために、日々の診療でお伝えしていることを紹介します。退院後すぐでも可能ですが、心配な方は、1カ月健診を終えたら、早速始めることをお勧めします。

【行う時のポイント】

1.必ず赤ちゃんが目覚めていて機嫌がよいときに行います。目を離さないようにしましょう

2.機嫌が悪いときや落ち着かないとき、寝てしまうようなら終了してください。

3.赤ちゃんの鼻や口がふさがれてしまわないように硬めのマットの上で行ってください。

4.時間の目安は生後1カ月以降であれば、1日合計10分。
(例:2分+3分+30秒+4分30秒=10分)生後2カ月以降なら1日合計20分、生後3カ月以降なら、1日合計30分。自分で寝返りできるようになるまで続けましょう。

5.赤ちゃんの視線の先におもちゃや鏡、ママやパパが来るようにして、慣れてきたらそれを左右にゆっくり動かして赤ちゃんが目で追うようにすると良いでしょう。

赤ちゃんがお母さんのお顔を見やすいように、できるだけお母さんの頭も低い位置に下げて見つめてあげてください。このとき赤ちゃんと目線が合いやすいように赤ちゃんの両脇の下に巻いたタオルなどをおいて行うのも良いでしょう。
赤ちゃんの視線の先におもちゃをおいてゆっくり動かして追視させてください。おもちゃは音が出て、お顔の絵柄が書いてあるものがおすすめです。

この頃の赤ちゃんは体重がよく増える時期でもあります。毎日行うことで、少しずつ自分の体を支えることができるようになっていきます。うつぶせ遊びをさせたときに、上肢(肩、腕、手)でからだを支える経験をすることによって、上肢の機能が高まりやすくなり、将来的な手の巧緻性※につながっていくこともわかっています。

※巧緻性:脳とつながる手指の力、手先や指先を上手に使うこと

日本でもうつぶせ遊びを行う大切さが正しく伝わるように小児科医として日々試みています。