赤ちゃんの発達を考える/ 小児外来便り その3 “床遊び”のススメ
赤ちゃんのこと

小児外来便り その3
“床遊び”のススメ

#赤ちゃんの発達を考える

小児外来便り その2では、赤ちゃんのご機嫌が良い時間こそ、赤ちゃんとのふれあいの時間にしてほしいと書きました。その時間をどう過ごすか、寝返り前なら、「うつ伏せ遊び」や、寝返りから立って歩くまでの頃なら、赤ちゃんの心と体を動かす遊びの「床遊び」がおすすめです。

■「赤ちゃん自らが動く」ことが大切

おなかの中では羊水の浮力に助けられていましたが、出生後は体にかかる重力にあらがいながら全身を動かすことで、赤ちゃんは少しずつ姿勢の取り方を学び、運動を発達させていきます。ここで重要なのは「赤ちゃんが自ら動く」ということ。姿勢と運動の発達は、情緒や社会性の発達を下支えする大切な要素でもあります。

■床を使って遊ぼう

一般に赤ちゃんは、5カ月頃になると寝返りができるようになりますが、これはいよいよ赤ちゃんが自分で移動する準備が整ってきたということです。しっかりと床上の運動経験を積み上げていくことは、ハイハイや二足歩行、言語によるコミュニケーション、道具を上手に扱う手の発達を促すことにもつながっていきます。

<「床遊び」のポイント>

  • 赤ちゃん自身が意欲的に動くことができるように、安全で、なるべく広めの床がおすすめです。
  • 赤ちゃんを床に寝かせた姿勢から始めます。
    赤ちゃんがまだ出来ない姿勢や運動を無理にさせるのはNGです。
  • うつ伏せ遊びのときと同じように、大人もなるべく赤ちゃんと目の高さを合わせるようにしましょう。
    赤ちゃんの発見や喜びを一緒に喜んであげてください。
  • 動く範囲が広がるように、おもちゃなども利用して赤ちゃんの視線を少しずつ上へ、左右へ、そしてより遠くへと促しましょう。おもちゃに触れようと赤ちゃん自らが体を動かすことで、適切な重心移動や体を効率的に支える姿勢、協調的に体全体を動かすことなどを獲得していきます。
  • 移動範囲が広がってきたら、低い段差や緩やかな斜面などを用意して登ったり降りたりも取り入れてみましょう。

<視線を少しずつ上へ>

視線を少しずつ上へ
視線を少しずつ上へ

<横を見る>

横を見る

<斜面を登る>

斜面を登る

赤ちゃんが意欲的に自分で動くための原動力は、目に見えたものを触りたい、なめたいという気持ちです。一緒に遊ぶ時のおもちゃは、安全で、色や形や感触が豊かなものを選んでください。原色に近いはっきりした色のものがおすすめです。赤ちゃんが触れると形が変わったり、動いたり、音が出たりというわかりやすい変化や反応が現れることも大切です。床遊びには、ボールや筒などの転がる物も用意すると良いでしょう。

バウンサーやスイングチェアなどの育児用品は、大人が安心して少し目を離せる反面、赤ちゃんの動きを抑制してしまうこともあります。それらをうまく利用することは必要ですが、赤ちゃんがご機嫌な時間は一日の中でそんなに長くありません。この時間はスマホを置いて一緒に「床遊び」を取り入れてみてはいかがでしょう。

公開日 2025年11月28日