偏食で悩まないために、離乳食期から育てたい”食べるスキル“

小児外来便り その4
偏食で悩まないために、離乳食期から育てたい”食べるスキル“
みかんを食べ過ぎると手のひらと足の裏などが黄色くなる“柑皮症”をご存知ですか?
もう何年も前からみかんの季節に関係なく、一年を通して小児外来で見かけるようになりました。野菜が苦手なお子さんの栄養を補う目的で、野菜ジュースを習慣的に飲んでいるお子さんに多く見られます。
野菜ジュースだけでなく、効率よく栄養を取るための栄養補助食品は、大人にとっては便利です。こういった商品やその技術は、既に「食べるスキル」を身につけている大人にとっては、忙しいときなどに重宝しますが、最近は子ども向けの食品にも多く取り入れられています。小児科医としては、その利用の仕方について、少し心配もしています。
■子どもの偏食、少食
子どもの偏食・少食は、以前から多く相談を受ける内容です。適切な相談先が限られていることもあり、初期の対応や関わり方がとても大切だと感じており、小児科外来の現場でも、より適切なアドバイスが求められています。
「食べることは2歳までに学習するスキルである」という考えを、偏食外来をいち早く専門外来として開設された大山牧子先生は繰り返し提唱されています。野菜が苦手なお子さんの場合も、必ずしも野菜そのものが嫌いとは限りません。食べ物をおいしく食べるためのスキルが、まだ十分に身についていない可能性もあるのです。
■「食べるスキル」とは?
では、「食べるスキル」とはなんでしょうか。『子どもが食べ物を自分で口の中に入れて、口の中でつぶして、噛んで、混ぜて、味わって、まとめて飲み込むことができること』のことを、ここでは「食べるスキル」と考えてください。
まず親御さんに最初にしてほしいのは、子どもが楽しそうに、おいしそうに食べているかどうかを見ることです。上手に食べられていなくても、ポジティブな様子で食べようとしていれば、「食べるスキル」を育んでいる最中だといえます。
■子どもが好んで食べる食べ物
多くの子どもが好んで食べる食べ物には、共通した特徴があります。その特徴は①口に入れてすぐに、うまみや甘みが感じられるもの、②飲み込みやすいもの、③何度も食べたことがあり、経験的においしいと知っていること、です。①と②の特徴を満たす食べ物、例えばヨーグルトやスティックパン、お菓子や果物などは、最初からよく食べてくれることが多いので、すぐに③も満たしてしまいます。ただ、これらの食品ばかりに偏ってしまうと、舌や顎をしっかりと使う経験が少なく、いつまでも上手に使えないことにつながりかねません。スキルを伸ばしていくためには、すぐに甘みやうまみを感じにくかったり、飲み込みにくかったりする食べ物でも、「おいしい」と感じながら食べる経験を積み重ねることが大切です。お家でできる工夫をいくつかお伝えしたいと思います。
■家庭で出来る工夫
子どもが何かのスキルを獲得するには、繰り返し経験することが大切で、その経験の多くがポジティブなものであると効果的です。食事においても家族の食事から食べられそうなものを取り分けて、なるべく一緒に楽しく食べることが近道です。子ども自身が実際に口に入れることがなくても、食卓にのぼる食べ物の色や形、におい、家族がおいしそうに食べる様子を経験することに意味があります。
離乳食の初期であっても、ご機嫌がよければ、1日2-3回、10分から15分程度、食卓を囲む時間をつくってみてください。座る姿勢が安定してきたら、”食べられる歯固め”を与えるのがおすすめです。これは、欠けたり、折れたりしにくく、決して丸ごとが口のなかに入りきらないサイズの少し形のしっかりした食べ物です。小麦アレルギーがなければ、バゲットを大きなサイズで切って軽くトーストしたものや、ブロッコリーやキャベツの芯などを大きく切って蒸したり、電子レンジにかけたものもおすすめです。
■留意すべきこと
✓ 食べ物の誤嚥(ごえん)による窒息
食事の場面で十分注意してほしいのは、食べ物の誤嚥(ごえん)つまり、食べ物が飲み込む際に誤って気管に入ってしまうことによる窒息です。食べ物による窒息の事故は、様々な要因が重なることで起きます。未然に防ぐためには赤ちゃんや子どもの場合、食事中に目を離さないことが何より大切ですが、万が一に備えて気管に詰まってしまった場合の対処法を一度、消防庁の動画などで確認しておくことをお勧めします。
✓ 「遊び食べ」も見守ろう
”遊び食べ”はテーブル周りの掃除が大変になることも多いので、ネガティブに語られることが多い言葉です。子どもにとっての楽しい経験は、つまり、「遊ぶこと」。食べ物についての探求を五感を使って行っているので、ここは少し手間がかかることは覚悟して2歳までできるだけ見守ってあげたいものです。
✓ 根気よく食卓に出し続ける
子どもが何か新しい食材やメニューを積極的に食べたいと思うようになるには、8~15回の経験が必要とされています。しかし、多くの親御さんたちは、平均5回でメニューに加えるのをやめてしまうという研究報告を目にしました。食べ物を見て、指先でツンツンするだけであっても1回の大切な経験です。食卓でのさまざまな経験が増え、手や口の機能が少しずつ発達するうちに、モグモグするとおいしいと感じられるようになっていくのです。
これから成長する赤ちゃんたちが、新鮮な野菜を目にして”食べたい!”と思える子どもになるように、離乳食期から「食べるスキル」を身につける機会を、日々の食事の中で積み重ねてあげてください。野菜ジュースも、流行りのジュレドリンクも、時々飲むのは良いけれど栄養バランスのために手放せないことにならないように、うまく利用してもらえたらと願っています。
- お話をお聞きした先生
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小児科専門医ありたき小児科有瀧 愉子 先生小児科医として診療を続けて20年以上。赤ちゃんや子どもの現在と未来の両方を大切にして、子育てに奮闘する方々の力になれるよう心がけている。


